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海上花火が美しい花火大会10選【絶景スポット付き】
海の上から打ち上がる花火は、水面の反射が加わって格別の美しさ。全国の海上花火大会を厳選し、絶景ビューポイントと水上花火の撮影テクニックを紹介します。

はじめに——なぜ海上花火は特別なのか
花火大会と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、河川敷から打ち上がる花火でしょう。しかし、海の上から打ち上げられる花火には、陸上花火とは全く異なる魅力があります。
「水面に映る花火を見た瞬間、花火の概念が変わった」という声は、海上花火を初めて体験した人に共通する感想です。
その最大の理由は「反射」です。海面は巨大な鏡となり、空に咲いた花火を水面にもう一つ映し出します。上下対称の光の柱は、まるで花火が倍になったかのような錯覚を生み出します。さらに、海上打ち上げは安全距離の制約が陸上よりも少なく、より大きな花火をより近い距離で打ち上げられるため、体の芯まで響く音圧と頭上を覆う迫力は段違いです。
水中花火(海面直下で爆発させる花火)を組み合わせた演出ができるのも海上ならでは。海面から扇状に広がる半円の光は、空中の花火とは異なる独特の美しさがあります。
この記事では、全国の海上花火大会の中から特に美しい10大会を厳選し、それぞれの絶景ビューポイントと撮影のコツをお伝えします。
海上花火を楽しむための基礎知識
潮の満ち引きが花火に影響する
海上花火は海面の高さによって見え方が変わります。満潮時は海面が高く、花火と水面の反射が近い距離で楽しめます。干潮時は海面が低くなり、反射が遠くなるものの、干潟が露出して独特の風景を見せることもあります。大会当日の潮汐を事前に確認しておくと、ベストな観覧時間がわかります。
風向きは海から陸に吹くのがベスト
海上花火で最も困るのは、煙が観覧エリア側に流れてくること。理想は海から陸に向かって風が吹く「海風」の状態ですが、夏の夜は陸風(陸から海に向かう風)に変わることが多い。この風向きの変化を考慮して、風上側に位置取りすることが重要です。
海沿い特有の冷えに注意
夏でも海沿いは夜になると気温が下がります。特に風がある日は体感温度が一気に下がるため、薄手の上着を一枚持参することをおすすめします。
海上花火が美しい花火大会10選
1. 熱海海上花火大会(静岡県熱海市)
大会の特徴: 熱海湾の天然のすり鉢地形を最大限に活かした花火大会。海面から打ち上がる花火の音が湾内で反響し、まるでサラウンドスピーカーに囲まれたかのような音響効果を体感できます。「熱海の花火は湾のすり鉢構造のおかげで、音が反響してまるでサラウンド。他の大会とは別物」というリピーターの声も。打ち上げ時間は約25分と短いですが、そのぶん間を置かず次々と花火が上がるので、密度の高い体験が味わえます。フィナーレの「大空中ナイアガラ」は海面全体が金色に染まる圧巻の演出です。
絶景スポット: サンビーチの中央付近は正面に打ち上げ場所を望む最高の位置。しかし混雑を避けるなら、熱海城(錦ヶ浦山頂)からの俯瞰がおすすめです。有料施設ですが花火当日は夜間営業しており、湾全体を見下ろす高台から花火と熱海の夜景を同時に楽しめます。また、親水公園のムーンテラスはイタリアのリビエラ海岸をイメージした石畳のテラスで、花火とのコントラストが美しい穴場です。
撮影のコツ: 熱海は湾が深いため、広角レンズ(24mm以下)で湾全体を入れると花火の反射まで美しく収まります。サンビーチからは標準レンズでも十分ですが、熱海城からは50mm程度で花火をクローズアップする構図が映えます。
2. 鎌倉花火大会(神奈川県鎌倉市)
大会の特徴: 由比ヶ浜海岸の沖合から打ち上げられる花火と、名物の水中花火のコンビネーションが見どころ。水中花火は船上から海面に向けて花火を投げ入れ、海面から扇状に開く独特の形が特徴です。空中の花火が円形なら、水中花火は半円形。この対比が鎌倉花火の最大の魅力です。
絶景スポット: 由比ヶ浜のメイン観覧エリアは混雑しますが、材木座海岸側に歩くと人が減ります。水中花火は由比ヶ浜正面が最も見やすいですが、稲村ヶ崎公園からは江の島の灯台と花火を同時にフレームに入れられる構図が可能。少し遠くなりますが、逗子マリーナの護岸沿いは波の音と花火のコラボが楽しめる静かなスポットです。
撮影のコツ: 水中花火は海面ギリギリの低い位置で開くため、カメラの高さを低くする(三脚を短めに設定する)と迫力のある写真が撮れます。波打ち際まで寄って、前景に打ち寄せる波を入れる構図は鎌倉ならではの一枚になります。
3. 宮島水中花火大会(広島県廿日市市)
大会の特徴: 世界文化遺産・厳島神社の大鳥居をシルエットにした花火は、日本の花火写真の中でも最もアイコニックな一枚。水中花火を中心とした構成で、大鳥居越しに扇状に広がる光は「日本の美」そのものです。打ち上げ数は約5,000発と控えめですが、ロケーションの圧倒的な美しさがそれを補って余りあります。
絶景スポット: 宮島の厳島神社周辺は早朝から場所取りが必要なほどの人気。大鳥居の正面に陣取れれば最高ですが、現実的には嚴島神社の石鳥居付近から見上げる構図がおすすめ。穴場を求めるなら対岸の本土側、地御前の海岸沿い。大鳥居のシルエットと花火を横から眺める構図で、帰りのフェリー渋滞を完全に回避できます。宮島口から西へ徒歩20分の阿品海岸も、静かに花火を楽しめる地元民御用達のスポットです。
撮影のコツ: 大鳥居と花火の両方にピントを合わせるためにF11以上に絞り、花火を長時間露光で捉えます。大鳥居をシルエットとして黒くつぶすか、ライトアップされた鳥居を少し明るく写すかで印象が大きく変わります。テスト撮影で露出を決めてから本番に臨んでください。
4. 三国花火大会(福井県坂井市)
大会の特徴: 北陸最大級の花火大会で、三国サンセットビーチの沖合から約1万発が打ち上がります。最大の見どころは水中スターマイン。海面すれすれで連続爆発する花火の連鎖は、波しぶきと炎が混ざり合う荒々しい迫力があります。日本海の雄大な水平線を背景にした花火は、太平洋側の大会とはまた違った壮大さを感じさせます。
絶景スポット: サンセットビーチの砂浜が正面観覧エリア。波打ち際に近い場所ほど水中花火の迫力を感じられます。混雑を避けるなら、東尋坊方面に向かう海岸線沿いの遊歩道が穴場。約1km離れますが、花火は十分に見えます。さらに上級者向けとして、東尋坊の断崖上から日本海と花火を望む絶景ポイントがあります。ただし夜間の断崖は危険なので、懐中電灯と十分な注意が必要です。
撮影のコツ: 日本海の水平線が暗く沈む中に花火が浮かび上がる構図は、水平線をフレーム下部3分の1に配置する「三分割法」が効果的。水中スターマインは動きが速いため、バルブよりも2〜4秒の固定シャッター速度で数を撃つ方式が安定します。
5. 按針祭海の花火大会(静岡県伊東市)
大会の特徴: 伊東の夏を代表する約1万発の花火大会。打ち上げ場所が海岸から非常に近く、花火の「近さ」では全国トップクラスです。頭上を覆い尽くすような至近距離の花火は、音圧が体を突き抜ける感覚。空中の花火と水中花火の同時打ち上げによる「上下挟み撃ち」演出は、伊東ならではの名物です。
絶景スポット: 伊東オレンジビーチが正面会場で、砂浜に座って至近距離で楽しめます。しかし伊東港周辺の堤防沿いは少し距離がある分、全体像が見えやすい。さらに穴場は、国道135号線沿いの「なぎさ公園」付近。ブロンズ像が並ぶ遊歩道から、伊東の街並みと花火を同時に楽しめます。伊東温泉の宿によっては屋上やテラスから花火が見えるため、宿選びの際に確認する価値があります。
撮影のコツ: 花火が近すぎて広角でも入りきらないことがあります。16mm以下の超広角レンズか、スマートフォンの超広角モードが活躍する珍しい大会です。近距離の花火は明るさが強烈なので、ISOを下げてF13〜F16まで絞るくらいでちょうどよいです。
6. 諏訪湖祭湖上花火大会(長野県諏訪市)
大会の特徴: 厳密には「海上」ではなく「湖上」ですが、水上花火の美しさで外せない大会です。約4万発は国内最大規模。見どころは全長約2kmの「水上スターマイン」と「Kiss of Fire」。湖面に浮かべた台船から一斉に打ち上がる花火は、湖全体が燃え上がるかのようなスケール感。半円形に開く水上花火が湖面の反射と合わさり、完全な円形に見える瞬間は息を呑みます。
絶景スポット: 諏訪湖畔の有料席は迫力満点ですが、岡谷市側の湖岸公園から対岸の花火を眺めるのがおすすめ。湖面の反射が最も美しく見える距離感で、混雑もメイン会場より大幅に少ない。高台なら立石公園が鉄板。諏訪湖を一望する展望台から、湖全体に広がる花火のパノラマを楽しめます。撮影スポットとしても有名で、三脚が並ぶので早めの場所取りが必要です。
撮影のコツ: 立石公園からは70〜200mmの望遠レンズで湖面と花火を圧縮する構図が映えます。湖岸からは24〜35mmの広角で水上スターマインの全景を狙いましょう。水上スターマインは横に長く広がるため、縦構図よりも横構図が正解です。
7. 館山湾花火大会(千葉県館山市)
大会の特徴: 「鏡ヶ浦」の異名を持つ館山湾は、波が穏やかで水面の反射が美しいことで知られています。約1万発の花火が鏡のような海面に映る光景は、まさに名前通り。特筆すべきは海上に設置された「水中花火」と「海上スターマイン」の組み合わせ。水面すれすれの花火が波紋とともに広がる様子は、静かな湾だからこそ楽しめる演出です。
絶景スポット: 北条海岸が正面会場ですが、海岸線が長いため混雑は分散されます。砂浜の南端(那古船形方面)は比較的空いており、花火を斜めから見る角度が水面の反射をより強調します。また、城山公園の展望台は館山湾を見下ろす高台で、花火と館山市街の夜景を同時に楽しめるビューポイント。館山駅から徒歩15分程度のアクセスです。
撮影のコツ: 館山湾の「鏡ヶ浦」効果を活かすために、水面の反射面積を広く取る構図が効果的。カメラを低い位置にセットし、フレームの下半分を海面にすると、花火が上下対称に映る幻想的な写真が撮れます。三脚は砂浜にめり込みやすいので、足に皿状のアタッチメントを付けるか、板を敷いて安定させてください。
8. 熊野大花火大会(三重県熊野市)
大会の特徴: 世界遺産・鬼ヶ城を背景にした花火大会。直径600mに広がる三尺玉海上自爆や、鬼ヶ城の岩場に仕掛けられた「鬼ヶ城大仕掛け」は他のどの大会にもない唯一無二の演出です。崖に反射する爆音は文字通り地響きとなり、花火を「見る」だけでなく「浴びる」感覚を味わえます。
絶景スポット: 七里御浜の砂利浜がメイン会場。約17万人が訪れますが、海岸線が7里(約28km)にわたって続くため、北に歩けば歩くほど空いていきます。鬼ヶ城の仕掛け花火は正面(七里御浜の南端)が最も迫力がありますが、花火全体を楽しむなら会場から500m〜1km北の海岸がベストバランス。鬼ヶ城の展望台からは真上から花火を見下ろすという稀有な体験ができますが、足場が悪いため上級者向けです。
撮影のコツ: 鬼ヶ城の岩場を前景に入れると、熊野ならではの迫力ある写真になります。三尺玉海上自爆は直径が非常に大きいため、広角レンズでも入りきらないことがあります。パノラマ撮影も一つの手段です。シャッタースピードは1〜2秒で連写し、後から選ぶ方式が三尺玉の一瞬の開花に対応しやすいです。
9. 洞爺湖ロングラン花火大会(北海道洞爺湖町)
大会の特徴: 4月下旬から10月末まで毎晩約20分間の花火が上がるという、日本で最も長期間開催される花火大会。1回あたりの打ち上げ数は約450発と控えめですが、洞爺湖の静寂な湖面に映る花火は、大規模大会とは異なる「癒し」の花火です。湖上を移動する船から打ち上げるため、花火の位置が刻々と変わるという珍しい演出も。
絶景スポット: 洞爺湖温泉街の湖畔遊歩道がメイン観覧場所。宿泊する温泉旅館の部屋から花火を楽しむのが最も贅沢な鑑賞方法です。湖畔に面した露天風呂から花火を眺められる宿もあり、花火大会の中でも最高レベルのリラックス体験が可能。穴場は、壮瞥公園の展望台。洞爺湖と有珠山を一望する高台から、湖上花火を俯瞰する構図が楽しめます。
撮影のコツ: 花火が船から打ち上げられるため位置が変わります。広めのフレーミングで待ち構え、花火の位置を確認してからズーミングで調整する方法が実践的。湖面の反射は穏やかで長時間持続するので、5〜8秒のスローシャッターが効果的です。
10. 宇治川花火大会のあった場所に代わる——舞鶴ちゃったまつり花火大会(京都府舞鶴市)
大会の特徴: 日本海側の軍港・舞鶴の湾内で開催される花火大会。旧海軍の赤れんが倉庫群や自衛隊の護衛艦がシルエットとなり、他にはない「軍港花火」の独特な雰囲気を演出します。約5,000発の花火が狭い湾内で反響し、音の迫力は規模以上。護衛艦と花火という日本でここだけの組み合わせは、花火マニアの間で密かに評価が高い大会です。
絶景スポット: 東舞鶴の赤れんがパーク付近がメイン会場。レンガ倉庫の赤い壁面に花火の色が反射する光景は写真映え抜群。穴場は北吸桟橋周辺で、停泊中の護衛艦越しに花火を楽しめます。自衛隊基地の一般開放日と重なる場合は、基地内から見られることもあります。さらに離れたポイントなら、五老スカイタワーの展望台。舞鶴湾を見下ろす高台から、湾全体に広がる花火のパノラマが楽しめます。
撮影のコツ: 護衛艦をシルエットとして前景に入れるためには、船体と花火の両方が入るポイントを事前にロケハン。艦体はかなり暗いので、花火の光で薄く照らされる瞬間を狙います。レンガ倉庫を前景にする場合は、街灯や看板の光が入りやすいため、構図を慎重に選んでください。
海上花火を撮影するための水面反射テクニック
海上花火の最大の魅力は水面の反射です。この反射を美しく撮るためのテクニックをまとめます。
水面の反射を最大化する構図
低い視点で撮る: カメラの位置が低いほど、水面の反射面積がフレーム内で大きくなります。海岸に三脚を低くセットし、フレームの下半分以上を水面にする構図が理想的。
凪(なぎ)の状態が最高条件: 波が穏やかなほど水面が鏡に近くなり、花火の反射が鮮明になります。湾内の大会は外海に比べて波が小さいため、反射撮影に向いています。
波を味方につける方法: 波がある場合は、あえて長時間露光(10秒以上)で波を平滑化し、シルクのような水面に花火が映る写真を狙うこともできます。NDフィルターを使ってシャッター速度を稼ぐ上級テクニックです。
ホワイトバランスの選び方
水面の反射は空の色に影響されます。**太陽光(5200K)**に固定すると、花火本来の色と水面の青みがバランスよく表現されます。蛍光灯設定にすると全体が寒色に寄り、クールな印象の写真になります。RAW撮影なら後から調整できるので、迷ったらRAWで撮って後処理で決めるのが安全策です。
スマートフォンでの撮影ポイント
一眼カメラがなくても、スマートフォンで海上花火の反射は撮れます。
- ナイトモードをON(iPhone 12以降、Galaxy S21以降など)
- AE/AFロックで明るさとピントを固定(画面長押し)
- 超広角モードで花火と水面の反射を広く入れる
- 動画を撮って後からスクリーンショットが最も確実
iPhone 15 Pro以降の「アクションモード」は手ブレ補正が強力で、三脚なしでも夜景花火に対応できるレベルです。
まとめ——海上花火は「体験」の花火
海上花火の魅力は、写真や映像では伝えきれない部分にあります。潮の香りと波の音、頬をなでる海風、空と海の両方に広がる光の洪水。五感すべてで感じる体験こそが海上花火の真髄です。
この記事で紹介した10大会はいずれも水上ならではの演出に力を入れている大会ばかり。今年の夏は、海辺の特等席で、空と海の二重奏を楽しんでみてください。